
富士電機株式会社様
PaaS型「Acquia Cloud Platform」と SaaS型「Acquia DAM」の連携で検索機能改善とデータ管理の効率化を実現

富士電機株式会社では、長年利用してきた資料ダウンロードサイトの老朽化に伴い、検索やデータ管理機能の改善を求めていました。従来のシステムでは、数十万件もの製品ドキュメントが管理され、検索結果の表示レスポンスの低下や日次でのサーバー再起動が必要でした。また、製造業ならではの複雑な検索ニーズもあり、現場での業務効率化が求められていたのです。
何より、資料ダウンロードサイトは顧客との重要な接点でありながらも、顧客が必要とする情報にスムーズにアクセスできない状況が生じていました。この課題は、同社のブランドイメージや競争力を損なう一因となっていました。
SCSKと富士電機、そしてデジタルコミュニケーションに精通するINTRIX社が協働し、最新のクラウドベースのCMSとDAM(デジタルアセット管理システム)を組み合わせたシステムの刷新に取り組みました。
所在地
東京都品川区大崎一丁目11番2号 ゲートシティ大崎イーストタワー
創立
1923年8月29日
URL
富士電機株式会社は、エネルギーと環境技術を基盤とし、パワーエレクトロニクス、半導体、発電プラント、食品流通の4つの事業分野で安全・安心かつ持続可能な社会の実現に貢献している。2024年3月時点では、同社は95か国で約46万点におよぶ製品を展開。 (出展:https://www.fujielectric.co.jp/about/company/databook/index.html#numberofproducts)
事例のポイント
お客様の課題
- 年間数万件の製品資料を登録する際、プレビュー機能がなく、また公開の確認は翌日まで行えないため、修正の手間が発生し、運用が非効率
- 必要な情報がヒットしないなどの検索機能に問題があり、顧客・社内ユーザーの利便性が低下
- オンプレミス環境での運用により、定期的なサービス停止の発生やシステム更新作業による運用コストの増加
課題解決の成果
- 数十万件に及ぶドキュメント管理の負担を大幅に削減し、管理側の操作性・検索性を向上
- ユーザー視点に立ったシステム設計 とUI刷新により、資料ダウンロード数は約165%以上となり、利便性・操作性の向上も達成。さらに、月単位の会員増加率は約180%に到達
- PaaS/SaaS活用によりダウンタイムをゼロに抑え、安定したシステム運用を実現
導入ソリューション
- PaaS型CMS「Acquia Cloud Platform」
- PaaS型ドキュメント管理ソリューション「Acquia DAM」
- コンテンツおよびドキュメントのSaaS型サイト内検索システム「SyncSearch」
富士電機株式会社(お客様の声)
「SCSKの優れた課題解決力とプロジェクト管理能力のおかげで、将来を見据えた柔軟なシステム基盤を構築することができました。新システムの操作性とパフォーマンスは飛躍的に向上し、業務効率化や新たな施策の展開に大きな弾みがつくものと期待しています」

背景・課題
顧客と社内ユーザーに価値ある体験の提供を目指し抜本的なシステム刷新に着手
幅広い産業分野に最先端のソリューションを提供する富士電機株式会社。同社の「資料ダウンロードサイト」は、製品情報や技術資料を集約し、顧客や販売パートナーとの重要なコミュニケーション基盤として機能してきた。しかし、10年以上前に構築されたこのシステムは、長年の部分的な改修を経て、複雑化・肥大化が進行。ユーザビリティの低下や運用効率の悪化など、様々な課題を抱えるに至っていた。
主要な課題の一つは、UIの設計が原因で顧客体験が損なわれている点であった。サイトの操作性が直感的でなく、ユーザーがスムーズに目的を達成できない状況が続いていた。例えば、会員登録のプロセスが複雑で入力項目も多いため、多くの顧客が途中で登録を諦めてしまう。また、資料をダウンロードするまでの手順も煩雑で、ユーザーが何度も画面を行き来しなければならず、「考えながら操作しないと進めない」と感じることが少なくない。こうした障壁が顧客の利用意欲を削ぎ、結果的に同社への信頼やロイヤルティに悪影響を及ぼしていたと考えられる。
運用面でもいくつかの課題が生じていた。同社では年間数万件もの製品資料や技術資料を登録する必要があったが、プレビュー機能が欠如していたため、登録内容の確認や修正に翌日まで時間を要していた。この状況は、誤情報の公開リスクを高めるとともに、修正作業の負担増にもつながっていたのである。
さらに、検索機能に問題があり、社内ユーザーが目的の情報にたどり着くことが難しくなっていた。絞り込み・ソート機能の不足や、外部検索エンジンとの結果の不一致など、具体的な不満が社内から寄せられる状況だった。
加えて、旧システムはオンプレミス環境で運用されており、バックアップやセキュリティパッチ適用のために定期的なサービス停止が発生していた。また、サーバーOSやミドルウェアのEOL対応コストも定期的に発生するなど、運用負担とコストの増大も深刻な課題となっていたのである。
「お客様に必要な情報をスピーディーに届けるには、使い勝手の良いサイトが不可欠です。しかし、旧システムの運用に多くのリソースを割かざるを得ず、サイトの利便性向上に注力できませんでした。サイトを訪れるお客様に価値ある体験を提供し、ビジネスの成長につなげていくには、抜本的な改革が必要だと感じていました」と富士電機の担当者は述べる。
こうした状況を打開し、顧客と社内ユーザーに価値ある体験を提供するべく、同社は抜本的なシステム刷新に乗り出すことを決断する。それは、単なる「老朽化したシステムの建て替え」ではない。デジタル技術を駆使し、同社のコミュニケーション基盤を、より使いやすく、より効率的に、そしてより拡張性の高いものへと生まれ変わらせるプロジェクトとして始動した。
解決策と効果
PaaS型「Acquia Cloud Platform」と SaaS型「Acquia DAM」の連携で効率的なデータ管理と検索機能を実現
富士電機の資料ダウンロードサイト刷新プロジェクトは、同社が抱える課題の抜本的な解決を目指し、複数のSIerによる厳正なコンペを経て動き出した。2023年10月に迫るOSサポート終了期限を見据え、富士電機は経験豊富なSIerとの協力が不可欠と判断。その選考過程で、最終的にSCSKが選ばれた理由について、本プロジェクトで富士電機のパートナーを務めたINTRIX社はこう説明する。
「SCSKの提案は、富士電機様の課題解決に向けた明快かつ具体的なアプローチを示していました。他社からは安価でのシステム構築という魅力的な提案もありましたが、短期的なコストメリットだけではリスクがあります。SCSKの提案は拡張性が高く、将来的なバージョンアップも見据えた適正なコスト設定であり、富士電機様の長期的な成長に最適だと判断しました」
富士電機でも、SCSKのシステム構築力と大規模Webサイト構築の豊富な実績を高く評価。「柔軟性と継続的な改善を実現できるのはSCSK以外に考えられなかった」と、SCSKを選定した。
SCSKとINTRIX社は、2020年の共同プレスリリース発表など、製造業のDX推進に向けた強固な協業関係を築いてきた実績がある。それぞれの持つノウハウと技術力を生かし合い、製造業のデジタル変革を推し進めるという共通のビジョンの下、今回のプロジェクトにも取り組んだ。

新システムの中核を担うのは、PaaS型CMS「Acquia Cloud Platform」とSaaS型デジタルアセット管理ツール「Acquia DAM」の2本柱である。
Acquia Cloud Platformは、オープンソースのCMSであるDrupalを基盤にした企業向けの柔軟かつ拡張性の高いCMSだ。PaaS型の採用により、Acquia社がインフラの構築と運用をサービスとして担うことで、富士電機の管理負担を大幅に軽減できる。特に決め手となったのは、数十万ページにも及ぶ大規模サイトを効率的に管理できる点で、数あるPaaS型CMSの中でもAcquia CMSは富士電機のニーズに最適だった。
一方のAcquia DAMは、クラウド上でデジタルアセットのライフサイクルを一元管理できる最新のDAMソリューションである。膨大なドキュメント管理と高度な検索性を両立し、さらに容量や機能の拡張性も高くなったことで、より効率的にデータを扱えるようになった。
旧資料ダウンロードサイトでは、ドキュメントタイプ別の検索方式だったが、新サイトではキーワード、資料カテゴリ、製品カテゴリの3つの軸で検索を行えるようになった。また、ユーザー視点を徹底したUIに刷新したことで、ダウンロード手順を3分の2まで短縮し、顧客が必要な情報にすぐアクセスできるようになった。
さらに、製造業に不可欠な品番検索の実装にも注力した。日本語の言語処理システムでは数字の羅列を検索キーワードとして認識させること が難しいという課題に対し、検索エンジンベンダーと緊密に連携。幾度となる協議を経て、品番検索に対応できるようにシステム改修を実施した。
プロジェクト最大の山場は、数十万件を超える既存コンテンツの移行だった。「移行対象のデータは膨大な量で、形式もバラバラ。自動化を進めつつ、例外的な案件にも一つ一つ丁寧に対応しなければなりませんでした」とSCSKの担当者は振り返る。
SCSKは周到な移行計画を立て、300行以上にも及ぶ詳細なタスクリストを作成。想定外の事態で工数が増えても、常に別のプランを用意することで柔軟な対応が可能である。 「プロジェクトが当初の予定通り問題なく進むケースは珍しいです。だからこそ、悲観的な考えを持ち、常にプランBを用意してプロジェクトを進めるようにしています」とSCSKの担当者は述べる。
この姿勢が役立ったのが、自販機などを扱う専門部署からの要望だった。もともとは食品流通部門にも資料ダウンロードサイトを使用してもらう予定だったが、プロジェクトも終盤に差し掛かった頃、「当部署では独自の業務を行うため、当部署専用の管理画面を新たに用意してほしい」という依頼が舞い込んできた。
専用サイトを一から構築する余裕は、時間的にも予算的にもない。だが、ここでSCSKが取った策は、Aquia DAM標準の管理画面の流用だった。既存の検索・ダウンロード機能を巧みに応用し、低コストかつ短期間で代替案を練り上げることができた。
この提案は食品流通部門の担当者に好意的に受け止められ、プロジェクトは無事に軌道に戻った。「当社の要望に真摯に耳を傾け、現実的な解決策を示してくれるSCSKのフットワークの軽さには、本当に助けられました」と、富士電機の担当者は話す。
SCSKの担当者も、「複数部門を抱えるお客様ならではの難題でしたが、ベンダー任せにせず、三位一体で解決策を導き出せたことが何より大きな収穫でした」と振り返っている。
今後の展望
ストレスフルな運用からの脱却- Acquia DAMの先進機能を活用し、新たなステージへ
この一大プロジェクトが予定通り完了してから約8か月後、UI刷新による直感的な操作性と高度な検索機能の導入が功を奏し、資料ダウンロード数は約160%以上、月ごとの会員増加率も約180%に達する成果を挙げた。
「数十万件に及ぶドキュメントを管理する大規模プロジェクトにおいて、SCSK様の冷静な課題解決力は非常に頼もしいものでした。特に、システム刷新だけでなく、将来的な拡張性や運用効率を見据えたアプローチで、OSやミドルウェアのEOL対応、セキュリティ強化、安定性の確保といった幅広い課題にも対応いただきました。
また、定期的なコミュニケーションと進捗報告により、プロジェクト全体を安心して見守ることができました。導入後はシステムの操作性とパフォーマンスが大幅に向上し、今後もこの柔軟な基盤を活用して、業務効率化や新たな施策をスムーズに展開していけると確信しています」と富士電機の担当者は話す。
INTRIX社の担当者も、次のように付け加える。
「SCSKさんのおかげで、ユーザー視点に立った価値あるシステムを構築できました。設計段階からユーザビリティの向上を意識した議論を重ね、お客様のニーズに合ったシステムを実現できたと思います。
また、SCSKさんの優れたプロジェクト管理力と品質管理手法には大いに助けられました。今後は、この新システムを基盤に、さらなるデジタル変革を推し進めていきたいですね。引き続きSCSKさんとの強固なパートナーシップを活かし、お客様のDX実現に尽力していく所存です」
全面刷新を終えた富士電機は、さらなる活用を見据えている。導入したAcquia DAMには、AIを活用した自動タグ付けや自動翻訳など、先進機能が数多く備わっている。これらを順次取り入れることで、コンテンツ管理の幅を広げ、新たな価値創出につなげていく計画だ。
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