CMSの今後の展望はいかに。「CMSの未来はどうなる?!」
- CMS
CMSのスペシャリストが語る! Webコンテンツ管理の今後の展望について
CMSの登場・啓蒙時代 ~ 差別化に差し掛かるCMSの現在。
昨今のWEBSASのサービスの核ともいえるコンテンツマネジメントシステム(Content Management System, CMS)。 CMSとは「Webコンテンツを構成するテキストや画像などのデジタルコンテンツを統合・体系的に管理し、配信など必要な処理を行うシステムの総称」とされ、 2005年頃より一般的に普及したといわれています。 今回はこれまでCMSを使ってWebサイト構築案件に携わってきた3名による、これからのCMSについての意見交換の模様をお届けします。題して、「CMSの未来はどうなる?!」
※3名のプロフィールはこちらをご参照ください。
※WEBSASで取り扱うCMS製品についてはこちらをご参照ください。
CMSの根幹は今も昔もかわらない
―― CMSを担当され始めた2006年頃と今のCMS、変化はありましたか?(横山)
- 古和田
- 根幹は変わってないと思います。Webとしては2006年頃からですが、コンテンツ管理の観点では2002年頃から10年以上携わっていますね。コンテンツマネジメントという言葉は以前からあり、そこからECM、WCMへと派生した様に思います。多少変わった点があるとすればお客様がCMSを導入される際に、昔はパッケージベンダーへ直接依頼されていましたが、徐々にCMSを扱うSIerにも相談が入ってくるようになったというぐらいですかね。
―― WCM(Web Content Management)の領域はどうですか?(横山)
- 古和田
- Webの領域でもあまり変わらないと思います。(WCMとCMSは)明確な方向性や棲み分けもまだ出来ていないと思いますし。2006年頃の当時からパッケージを扱うベンダーは、「これからはCMSの時代です」と言っていましたね。「CRM/ERP/DWH/CMS」というキーワードにおいて、「ERP、CRM」が一通り行き渡った次のキーワードが「CMS」だと。 未だに「CMS」から連想されるイメージは千差万別ですよね。ホームページを作るためのツールプラスアルファ程度を連想する人もいますし、もっと多くの機能を備えたものをイメージする人もいますね。私たちSIerはお客様がツールを使って、何をしたいのかということをヒアリングできないといけませんね。
CMSの啓蒙時代。必要な機能が備わり、製品が洗練された。
―― CMSの背景を振り返ってみると、2006,2008年頃から「ERP、CRM」と並び称されるべくプロモーションを行ってきた啓蒙時代があり、その間に製品は洗練された結果、特にミドルウェア寄りのCMSは似た製品となってきてしまったと感じています。2013年頃から差別化の時代に差し掛かってきている印象も受けますが、実際のところいかがでしょうか。(横山)
- 上野
- そうですね。「コンテンツを管理する」という点では製品の違いはほとんど感じませんね。
- 古和田
- 確かに、2006年頃はパッケージベンダーがお客様へこれからのCMS必要性について危機感を煽りつつ教育を行ってきた、いわゆるナーチャリングの時代だったと思います。その頃と現在を比べてもCMSの機能的な変化はあまりありませんね。 ただ以前と比べると管理画面のUIが洗練され綺麗になってきたと思います。そのUIの綺麗さが製品を差別化する上でのポイントの1つになってきているのではないでしょうか。
―― 確かにそうですね。綺麗=使いやすいと捉えられる傾向もありますよね。 (横山)
- 古和田
- (お客様が導入を検討される際のポイントとして)、今は備えている機能のラインナップというよりも、入力作業をする利用者が「これならうまく使えそうだな、少しは作業が楽になるな」といったUI(ユーザインタフェース)が導入を決める高いファクターになっていると思います。ですが本来は、CMSを導入することによって、「ビジネス上で何が得られるのか、何ができるのか」といったところを判断してもらうべきだと思います。これは「CMS=ホームページ作成ツールプラスアルファ」の世界から抜け出せていない啓蒙時代が続いている結果かもしれませんね。 とはいってもビジネス上の大きな視点で見れば、流行りのキーワードを取り込む施策はいくつかありましたね。ブログ・SNSが流行してきたらコミュニティツールとの連携ツールが出てきたり、「BRICs」というキーワードが飛び交いグローバル化が必要ともなれば、多言語展開・多言語管理ができる機能が充実したりと。ただそれらが導入の際の大きな判断基準となることがどれだけあるのかなぁとは思いますね。
―― 確かにトレンドを取り込む機能は徐々に備わってきていますね。(横山)
選ばれるCMSへ。差別化がはじまる
- 上野
- お客様に対してCMSの製品を提案する際には製品やバージョンにおける機能比較資料を提示しますが、機能の違いが導入に際しての判断材料になることはあまりなく、それらを提案する人柄や実績を根拠とされることが多いですね。そもそも機能別比較表の○×だけではうまく表現することも難しいですし。
―― その中でも、少しの差にこだわり、その違いを判断基準とされるお客様もいるのではないですか?(横山)
- 古和田
- お客様が既にクリティカルな課題を抱えている場合ですかね。
- 上野
- 確かにそうですね。 あと製品選定の際には、カバレッジの観点が必要だと思います。 お客様の戦略的な位置づけで、Webサイトを構築することになると思います。そのため多くの場合、お客様の要望「10」に対して「10」を実現できるツールを探されますが、すべての要望を満たせる製品はほぼなく、5~6割程度の顧客要望を満たす製品同士を比較することになります。 なので私は製品比較よりも (製品の標準機能で実現できない)残りの4割をどうやってカバーするのかがSIerの力の見せ所であり、お客様にとっても重要な選定のポイントだと思います。 つまり残りの4割を実現しやすいCMSは製品の差別化につながると思いますし、実際CMSにおいてスクラッチで拡張するというのはCMS特有の制約があるので、製品の色の出方が違いますしね。
―― 確かに、CMSはASPなりその他のプロダクトなりとうまく組み合わせて使いたいという要望もありますね。選定の際には、外部サービスやツールとの連携など、「製品だけでカバーできない部分を補いやすい」という広義での拡張性が考慮されていることも大事ですね。(横山)
- 上野
- そうですね。その プラスアルファする4割の部分がサイトの戦略的な要素を担っているケースも多いと思います。
―― ファイザー様の事例で独自に作り込んだ機能はありますか?(横山)
- 古和田
- 大きいところでは、会員登録の機能を作り込みました。
―― その作りこんだ会員登録機能は、他のOracle WebCenter Sitesを導入いただくお客様にもご提供できる汎用的な機能なのでしょうか?(横山)
- 古和田
- お客様の要望を取り込んで検討した機能なので、難しいと思います。 お客様によって管理したい情報は異なるので、一般的な会員機能を実現することは難しいですね。汎用的に作ることによって、マーケティング要素をもつデータを取得できなくなってしまうこともありますから。
- 上野
- 会員管理では扱う情報がとても重要なので、どのお客様にもマッチする汎用的な機能を実現することは難しいですよね。
―― 広義での拡張性で見た場合の製品の特徴を教えていただけますか?(横山)
- 上野
- プログラム開発ではフレームワークを使うことが主流になっているのにもかからず、CMSと組み合わせた途端にうまく機能しなくなる製品もありますよね。SIerとして見た場合にはSymfony上で動かすeZ Publishはフレームワーク上で機能の拡充を実現できる点がよく、他の製品と比べても新しい試みと感じています。またサイト内検索(Solr)などと連携するためのモジュールが整っていることもメリットだと感じていますね。
―― Oracle WebCenter Sitesにもそういった拡張をもたせるモジュールは充実していますか?(横山)
- 古和田
- いくつかありますが、Oracle WebCenter SitesはOracle製品なのでオープンソースと比べると、製品そのものをカスタマイズするといった面での自由度は低いと感じています。その点、eZ Publishはオープンソースであり、パートナーでもあるので、eZ Publishとその他を組み合わせたソリューションもできますし、ソースコードの改善もできるといったメリットがありますね。
―― そうですね、オープンソースはそういった面白みがありますね。確かにWEBSASは日本で有数のeZ Publish技術者の集団だと思います。(横山)
プラットフォームとして動き出すCMS?
- 古和田
- アドビ システムズが「Adobe CQ」の提供をはじめたり、Adobe SiteCatalyst(ログ解析ツール)も買収したりと、ここ数年に多少の動きはありました。今後、CMSがERPやCRMと並び称されるためにはどうすればいいんですかね。 2006年頃、内部統制のニーズに伴いドキュメント管理の標準化が必要になり、マイクロソフトのプラットフォーム(SharePoint)が生まれ、波及しましたね。こういった法律的な規制・ルールの改定に伴って、なんらかの新たな管理体制の必要性が生まれることは考えられます。製薬業界でも厚労省による企画や、文書についてもUS基準があったりするようですし。同じ理論でWeb業界でも統一化や方向性が生まれたら面白いですね。
- 横山
- マーケティングの観点でも、Web業界は「業界標準色」があまり強くないですからね。 ただ、Googleの検索エンジンからの呪縛はあります。 どのようにして、検索サイトの上位に表示させるか。 2008年頃にはSEO業者がリンクを大量に貼ったこともありましたね。
- 古和田
- そうですね。そのあたりでの制約は未だにありますね。
プロフィール
古和田 潮
1998年CSKに入社、主に通信系システムのSEとしてキャリアをスタート。 その後、ドキュメント管理、コンテンツ管理の領域への見識を深め、FatWire(現Oracle WebCenter Sites)を中心に中規模Webサイト開発のPM兼アーキテクトに従事。 2007年には通信キャリア様向けの大規模プロジェクトのアーキテクトとして、短納期かつ性能要件の高いCMS基盤構築に貢献し、 以後、製造業様向け製品管理システム(PIM)やファイザー様向け会員制Webサイト、予備校様向け会員制Webサイトなど、Oracle WebCenter Sitesを活用した大規模プロジェクトを成功に導く。 コンテンツ管理の領域では社内トップの見識を誇り、Oracle WebCenter Sitesの導入経験は国内随一の実績を有している。 趣味はツーリング。
上野 裕司
2003年CSKネットワークシステムズに入社、2004年にCSKへ転籍。主にインフラ領域のアーキテクトとしてキャリアをスタート。 2008年にWebサイト開発に関する興味を強くし現所属へ転籍。 以後、Oracle WebCenter Sites、OpenCms、eZ PublishといったCMSプロダクトを中心とした開発プロジェクトにおいて、ITアーキテクトとして参画。 Webに関する開発技法、ミドルウェアなど多彩な要素技術に関する深い見識を活用し、数々のプロジェクトの成功に大きく貢献している。 2013年には日本経済新聞社様 英文メディアサイト構築プロジェクトにPM兼アーキテクトとして参画し、ITコンサルティングからローンチまでの全工程において活躍したことが記憶に新しい。 趣味はイクメン。
横山 祐介
2001年CSKに入社、主に通信系システムのSEとしてキャリアをスタート。 2007年にFatWire(現Oracle WebCenter Sites)を利用した通信キャリア様向けの大規模プロジェクトのPMとして、短納期かつ性能要件の高いプロジェクトを成功に導いて以降、 2009年にCSKでは初めてeZ Publishを上智大学様向けに導入し、その後もeZ Publish、OpenCmsを中心に、10サイト以上のCMS導入プロジェクトをマネジメントし、成功に導いた実績を持つ。 2011年以後はコンサルティング及び複数プロジェクトのマネジメントを中心に活動し、WEBSASを牽引するキーパーソンの一人となっている。 趣味は麻雀。
WEBSASってどんなことができるの?に応えるべく他にもコラムを続々更新!! コチラから是非ご一読ください。