コラム
2019/09/27

私の考える「CMS」構築におけるプロジェクト管理について

  • CMS
  • 運用
  • 開発

CMSとは、言うまでもなく「コンテンツ管理システム」の略称で、専門知識がない人でもWebサイトの構築や運営ができる仕組みのことです。

多くの製品が存在し、WEBSASではハイエンドCMSからオープンソースCMSまで、多岐に渡る取り扱いがあり、多くの導入実績があります。

今回は、CMS構築におけるプロジェクト管理のポイントに焦点を当てて、解説をしていきます。

プロジェクト管理のポイントというと非常に多岐に渡るのですが、PMBOKに代表されるガイドラインは踏まえつつも、CMS構築プロジェクト管理の経験をもとに、敢えてポイント3点に絞ってご説明していきます。

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    ビジネス要件と業務視点を、プロジェクトメンバーにまで浸透させること

    ビジネス要件と業務視点

    まず念頭に置くべきは、「ビジネス要件」と「業務視点」と考えます。

    平たく言うと、

    • ビジネス要件とは、このCMSを導入することで、お客様のビジネスにどのようなメリットが享受されるのか。
    • 業務視点とは、このCMSを利用する方の業務がどれだけ楽になるか、効率化されるか。

    を常に考えるということです。

    プロジェクト管理する立場の者が、これらのことを念頭に置くだけでなく、プロジェクトメンバーの末端にまで考え方を浸透させることが、ポイントです。

    私はプログラマ上がりの技術者なので、長い間、「システムを作る」ことを目的に仕事をしてきました。

    そのため、システムを作ったら自分の仕事は完了。このシステムを、誰が、何のために導入したいのか。誰が使うのか、ということは二の次でした。これではよいシステムは作れません。

    我々SIerにとって、CMS構築してサービスインする時が1つのゴールなのですが、お客様にとってはスタートです。

    スタート地点に立った時に、お客様がやるべきことが明確になっている、サイト運用のイメージを持っていることが大事で、そのための、サービスイン前の運用立ち上げフェーズが、非常に重要であると考えます。

    3人のレンガ職人の話

    レンガ

    例えば、ビジネス要件や業務視点を、プロジェクトメンバー全員に浸透させることについて、私はイソップ童話の「3人のレンガ職人の話」を参考にしています。

    旅人が、とある村でレンガを積んでいる3人の人に出会います。何をしているのか尋ねると、それぞれ答えが違います。

    • A「レンガを積んでいるに決まってるだろう。来る日も来る日も同じ事やって大変だよ」
    • B「大きな壁を作っています。仕事なんでね。この仕事があるから家族を食わしていける」
    • C「大聖堂を作っています。これが建つと多くの人が幸せになれる」

    プロジェクトメンバーには、Cのような人もいますが、多くはB、中にはAのような意識の人もいます。

    プロジェクト管理者の役割は、「君たちは歴史に残る大聖堂を作っている。この村の人は、ずっと大聖堂がなくて困っていた。11月末までに完成すればクリスマスに間に合って、村始まって以来の念願の感謝祭が実施できる」というように、目的と意義を明確にし、メンバーに腹落ちさせることかなと思います。

    また中には、Cを理解しつつも敢えてAのスタンスを取るメンバーもいます。メンバー個々のパーソナリティやスタンスを理解して、俯瞰的に見て、どんな形で従事してもらったらベストかを考えるのも、プロジェクト管理者の仕事だと思います。

    役割分担を明確にした上で、システム⇔お客様の間の翻訳者になること

    お客様は、CMSやシステムの専門家ではありません。そのために専門家である我々が雇われています。

    お客様の情報システム担当者であっても、そのリテラシは様々です。

    「CMSを導入したら、Web知識がなくても、いい感じにサイトが作れるようになるんだろう」レベルの認識の方もいます。

    ここでまず、仕事を請け負う前に明確にすべきは、役割分担です。

    プロジェクトのフェーズを大きく以下のように5つに分けるとします。

    1. ビジネス要件を決定する。
    2. CMS業務要件、機能要件を決定する。
    3. CMS構築する。
    4. CMS運用を立ち上げる。
    5. CMS運用する。

    役割分担とは、各フェーズの主担当は誰で、我々はそのフェーズにどのように関わるか(主担当として関わるか、もしくはお客様が主担当で我々がサポートするか、等)を明確に決めることです。

    この中で2と4は、我々が主にリードしつつも、お客様と我々で一緒に進めていくケースが多いです。

    この2と4を上手く回せるかが、プロジェクトの明暗が分かれるポイントと考えます。

    2ではお客様の要望を言語化して合意に持って行き、そのお客様と決めた話を3のインプットとして設計やシステム言語に翻訳して開発者に伝える。

    3で構築したことやシステムの内容を、4でお客様の言葉に翻訳して伝える。

    この翻訳に手を抜かないこと(=認識齟齬をなくすこと)が、後々のトラブルを発生させない重要な取り組みになってきます。

    2から3が正しく伝わっているかの確認プロセスとしてレビューを、3から4を正しく伝えるためのトレーニングや運用立ち上げの工程が非常に重要であると考えます。

    システムは「シンプルに」を心がける

    ここで当たり前のことに立ち戻りますが、CMS構築プロジェクトに限らず、プロジェクトで最も重視すべきはQCD(納期・品質・コスト)です。

    いくらお客様視点、業務視点でプロジェクトを進めたとしても、納期やコストを守らなければプロジェクトは失敗です。

    ここで念頭に置くべきは、システムはシンプルな形のほうが良いということ。実装が容易になるというだけでなく、シンプルなシステム≒運用しやすいシステムとも言えます。

    たとえば、Webサイト上の全てのコンテンツをCMS化することがベストとは限りません。コンテンツの分類、更新頻度や運用担当者のスキルを鑑みて、構造化したデータとして管理するか、非構造化データ(HTML)として管理するか、CMS管理しないか、など最適な形を決めて行きます。

    まとめ

    CMS構築プロジェクトには様々な人が関わり、プロジェクト管理者の仕事は多岐に渡ります。

    その中でも、ビジネス要件・業務視点を念頭の置きつつ、お客様の要望をより良い形に消化・言語化して、シンプルな形のシステムに落としていけると、最終的に、お客様も我々も、Win-Winとなることができるのではないでしょうか。