
自社の強みを強化する、バリューチェーン分析の意味とは

現代社会では消費者が欲しい商品を世界中から見つけ出し、納得がいく値段で購入できる時代になりました。そのため、各企業は自社の商品およびサービスの中で、顧客の視点から見た場合に付加価値が特に高いもの(つまり自社の強み)を把握し、育成することが極めて重要になります。今回は、自社の強みを見つけ出すために有効な分析手法であるバリューチェーン分析について解説します。
バリューチェーンとは
バリューチェーンとは、日本語では「価値連鎖」と呼ばれる用語で、あるアメリカの経営学者によって提唱されました。これは事業を「主活動」と「支援活動」とに分けて、どの工程において付加価値を生み出しているかを分析するフレームワークです。
通常、商品あるいはサービスには原価や原資のみでなく、企業の様々な活動によって多種多様の付加価値が付けられています。こうした付加価値が「バリュー(価値)」になり、付加価値を付けていく一連の活動を「チェーン(連鎖)」と見なし、全体としてバリューチェーンと呼んでいます。このフレームワークでは、事業を色々な活動に細かく分化し、その結果から事業での競合優位になる源泉(すなわち強み)を適切に把握できるため、事業戦略を練る上での強力な武器になります。
バリューチェーンの構成要素
バリューチェーンの概念が生まれた際に、組織が常日頃行っている多様な企業活動を、製品生産および流通、消費と直接関連性が有るか無いかによって「主活動」と「支援活動」の2種類に大別されました。
1,主活動について
主活動は商品製造あるいはサービスの提供など、商品の製造から顧客に消費されるまで一連の流れに直接関わりを持っている活動の総称です。製造業での主活動の例として「購買物流」と「製造」、「出荷物流」と「販売・マーケティング」、そして「サービス」の5種類が挙げられています。
2,支援活動について
一方、支援活動は上記の一連の流れに直接関係性は持たず、主活動を支援することが主な目的とする活動の総称。製造業での支援活動は、例えば「全般管理(インフラストラクチャー)」や「人事・労務管理」、「技術開発」および「調達」の4種類とされています。
バリューチェーン分析の意味とは
こうしたバリューチェーン分析を行う意義は、自社と競合他社に対して実施すれば自社の強みが整理できるだけでなく、市場における変化や消費者ニーズなどの外的要因により競合他社がどのように動くかを予測できることです。
1,自社におけるバリューチェーンの把握
まず、分析は自社におけるバリューチェーンの分析、つまり自社にどのような主活動および支援活動があるかについて把握すること。先ほど挙げた例は製造業のケースですが、業態によって定義や流れは様々です。例えば、小売業の場合には「商品企画」から「仕入れ」を経て「店舗運営」や「集客」、「販売」および「サービス」によって主活動が定義されます。
そして、こうした主活動においてどのプロセスでどういった付加価値を生み出しているか、それとも付加価値がないのかを把握することが、次のステップに進むための重要なポイントとなります。自社に関するバリューチェーン分析を行うと、各プロセスで発生する付加価値の量とバランスを正確に把握でき、競合他社より優れている点に加えて劣っていると思われる点が明確になるでしょう。
2,自社の持つ価値の強みと弱みの分析
自社がどのようなプロセスで活動を実施しているかを分析したのち、次のステップで競合他社のバリューチェーンと比較していきます。ここでお勧め手法の一つが、自社および競合に関して強みと弱みを記載する表を作成し、社内で可能な限り多くの人にそれを配布して記入してもらう方法です。
この時のポイントは、少人数では実施しないこと。なるべく沢山の人から情報を集め、それらの結果を集約してシートを一つ作成しましょう。こうすれば、自社が持っているバリューチェーンについて、強みと弱みを適切に分析することができます。
バリューチェーン分析の具体的な方法
バリューチェーン分析を活用する方法として、「VRIO(ヴェリオ)」によって経営資源の競争優位性の分析ができます。VRIOは「Value(価値)」と「Rareness(希少性)」、「Imitability(模倣可能性)」と「Organization(組織)」のそれぞれの頭文字を組み合わせた用語です。これらは経営資源の分析における4種類の要素を表しています。
それぞれの要素は経営資源に関して分析するための項目で、具体的に「Value(価値)」では「経営目標を達成するために有効か」、「Rareness(希少性)」では「希少性があるか」を分析します。さらに「Imitability(模倣可能性)」で「他社から真似されにくいかどうか」、「Organization(組織)」では「その経営資源を最大限活かせる組織作りを実現しているか」について、それぞれ詳しく見ていく訳です。
この時、記載してもらう記号を4種類程度決めておいて、予めそれぞれの記号に点数を付けておくと、活動の価値をより正確に算出することができます。個別に記載されたVRIOシートを全て集計し、自社におけるVRIO分析表を作れば自社が競合優位となっている活動が明らかになるはずです。この段階まで進むと、例えば「Rareness(希少性)に改善する余地があるので、プレミアム感を演出して希少性の向上を図る」というように、次にどのような戦略で自社の事業を成長に導けば良いのかが分かってきます。
効果的なバリューチェーン分析を行うコツ
以上の手順でバリューチェーン分析が終了すると、自社と競合他社との差別化に繋がりますし、自社が強化すべき点が見えてきます。ただし、正確な分析を行っていくにはできるだけ多くの部署から、バリューチェーンにおける全プロセスから横断的に情報を収集し、統合していく必要があります。そうでないと、自社の強みを的確に把握することが容易でなくなってしまうからです。
ぜひ携わっている事業や組織でバリューチェーン分析を試してみてください。
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