マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(1)
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「近年、大規模なWebサイトの開発を行う際「マルチベンダー体制」でプロジェクトを進めるケースが増えてきています。
WEBSASが発足して10年ですが、その間のWebサイトに関わるテクノロジーの進化やニーズの多様化も背景となり、当社も単独でなく他社開発ベンダー様と協力して、お客様のプロジェクトを推進する事が多くなっています。
そのような中で、PMBOKで語られるプロジェクト管理ノウハウをベースとしつつ、これまでのWEBSASの大規模Webサイト開発の経験を活かして、マルチベンダー体制でのプロジェクトを成功に導くポイントについて、いくつかご紹介させて頂きます。
連載コラム第一回は、マルチベンダー体制のメリットとデメリットについて、述べさせて頂きます。
マルチベンダー体制とは
「マルチベンダー」という言葉を調べると、
という解説が得られます。(ASCII.jpデジタル用語辞典より)
- ①複数のメーカーの製品を販売する企業や、販売形態の事
- ②複数のメーカーのパソコンや周辺機器を利用して構築されたコンピューターシステムの事
今回、このコラムで取り上げさせて頂くのは、②の意義をもとにした、
- マルチベンダー体制とは、お客様のビジネス要件とプロジェクト目標を達成する為に、複数の開発ベンダーが協同一致してプロジェクトを推進する事
なぜ、マルチベンダー体制が求められるのか
2018年にはGoogleが20歳の成人式を迎えました。(手前味噌ですが、当社WEBSASも10周年を迎えました。)
ここ数年のWebを中心とした、お客様のビジネスニーズの拡大にあわせて、関連するテクノロジーも加速度的に進化しています。
お客様のビジネスを支えるシステムを構成するアーキテクチャも、多様化・複雑化している状況にあります。
例えば、10年前には想像できなかった、スマートフォンデバイス・サーバレスアーキテクチャー・3rdPartyデータのようなテクノロジーが、現在ではエンドユーザーに対して魅力的なWebサイトを構成する為の重要な要素となってきています。
また、お客様も開発ベンダーに対して「より早く・より安く・より品質高く」システムを構築できる事を求められます。
このような時代背景の中で、「餅は餅屋」ではありませんが、それぞれのテクノロジーに精通した複数の開発ベンダーが協同して、お客様のプロジェクト目標を達成する「マルチベンダー体制」が求められています。
マルチベンダー体制のメリット
マルチベンダー体制を採用する上でのメリットは以下のものがあります。
ベンダーの得意領域を持ち寄る事ができる
例えばWebサイトでの会員制ニュース配信サービスを新規構築するような場合にシステムに求められる機能としては
- コンテンツ管理 ・・・記事データの作成、公開、アプリ配信など
- 会員・契約管理 ・・・会員登録、属性管理、契約情報管理
- 課金・決済管理 ・・・継続課金、オンライン決済、支払情報管理
- 分析・レポート ・・・ユーザー行動履歴、売上レポート、セグメント
- マーケティング ・・・DM、レコメンド、パーソナライズ
- クラウド基盤 ・・・IaaS/PaaS
大規模サイト開発が得意なSierであれば、これらのテクノロジー要素をカバーできる可能性は高いですが、限定領域ではあっても、非常に強力なソリューションを提供できる開発ベンダーも存在します。 むやみに要素を分離する事は得策ではありませんが、複数の開発ベンダーが得意領域を持ち寄り各領域でのノウハウ・実績を活用できるメリットがあります。
ベンダー依存のリスクを低減できる
近年はオープンアーキテクチャが採用される事が多いため、過去に比べると程度は低いものですが、採用するパッケージやサービスによっては、いわゆる「ベンダーロックイン」となる可能性も考えられます。
基幹系システムと違って、Webサイトはユーザニーズやトレンドの変化が激しくシステム構築後にもエンハンス対応などが必要であり、特定の開発ベンダーに対する依存度が高くなってしまう事で、追加開発時のスピード感や柔軟性がかけてしまう可能性があります。
複数の開発ベンダーが得意領域を分担する事で、ベンダー依存のリスクを低減する事ができます。
また、近年はIT技術者の需要過多の状況にあり、大規模開発案件になればなるほど要員リソースの確保がプロジェクト成功の鍵と言えます。
複数の開発ベンダーを採用する事により、要員リソースを幅広く確保する事が期待できます。
マルチベンダー体制のデメリット
マルチベンダー体制を採用する事はメリットだけではありません。
メリットの裏返しでもありますが、デメリットをきちんと理解してプロジェクト推進上の考慮点とする必要があります。
ベンダーを取りまとめて推進する必要がある
ベンダー各社がそれぞれお客様との契約関係にあり、ベンダー間での商流がない場合は、プロジェクト全体の推進は、お客様自らが責任をもって実施して頂く必要があります。
各ベンダーは、お客様のご依頼(RFP)基づく、開発スコープと開発計画を前提とした契約の範囲の中で責任をもってプロジェクトを遂行しますが、仮に、特定のベンダーが開発スコープを満たさない場合や当初計画を履行できない場合に、プロジェクト全体や他ベンダーに対する影響が発生する場合は、そのリスクはお客様が負う事になります。
プロジェクト全体の立ち上げ・計画・実行の各フェーズにおいて、お客様が主体となり複数ベンダーの取りまとめ・コントロールを行って頂く事が重要です。
サブシステム境界を事前に明確化する必要がある
マルチベンダー体制を採用する場合、サブシステム単位(例えば、コンテンツ管理領域と会員・契約管理領域など)で担当を分離する事が考えられます。
システム全体としてはサブシステムが連携する事で、最終的なビジネス要件やプロジェクト目標が達成されます。
そのため、サブシステム境界を事前に明確化した上で、システム間連携の接点となる「インターフェース」には十分に注意を払う必要があります。 一般的なシステム開発工程としては、要求分析・システム化要件定義・システム設計・外部設計といった上流工程が存在しますが、複数ベンダーでサブシステムを分担する場合は、これらの上流工程で認識齟齬が発生しないように、ベンダー間のコミュニケーション強化と、サブシステム境界、インターフェース仕様の明確化と成文化を行っていく必要があります。
まとめ
近年、Webサイトのようなビジネスニーズやトレンド変化の激しいシステム開発のシーンにおいて、多様なパッケージやクラウドサービスを利用したマルチベンダー体制を採用するケースが増えてきています。
マルチベンダー体制を採用する場合は、メリットだけではなくデメリットもありますが、デメリットを十分に考慮して、プロジェクトの立ち上げ・計画・実行を行う事で対策を行う事が可能です。
第二回では、プロジェクト成功の最も重要な鍵となる、プロジェクトの「立ち上げ」「計画」時のポイントについてご紹介させて頂きます。