マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(2)
- 運用
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(1)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(2)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(3)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(4)
「近年、大規模なWebサイトの開発を行う際「マルチベンダー体制」でプロジェクトを進めるケースが増えてきています。
WEBSASが発足して10年ですが、その間のWebサイトに関わるテクノロジーの進化やニーズの多様化も背景となり、当社も単独でなく他社開発ベンダー様と協力して、お客様のプロジェクトを推進する事が多くなっています。
そのような中で、PMBOKで語られるプロジェクト管理ノウハウをベースとしつつ、これまでのWEBSASの大規模Webサイト開発の経験を活かして、マルチベンダー体制でのプロジェクトを成功に導くポイントについて、いくつかご紹介させて頂きます。
連載コラム第一回では、マルチベンダー体制のメリットとデメリットについて、述べさせていただきました。
第二回では、マルチベンダー体制におけるプロジェクトの「立ち上げ」・「計画(体制整備)」までのポイントについて、述べさせていただきます。
プロジェクトの成功の鍵は「立ち上げ」と「計画」にあり
「PMBOKをご存じの方であれば、プロジェクトの成功の鍵が「立ち上げ」「計画」プロセスにかかっている事を十分にご理解されていると思います。
当社のようなシステムインテグレーションを請け負っているベンダーにとっては、この事は徹底的に教え込まれているものですが、ベンダー間に商流のないマルチベンダー体制を採用した場合は、複数ベンダーをコントロールし取りまとめる主体は、お客様になります。
当然の事ながら、各ベンダーも全体プロジェクトの成功という共通の目標のもと協力姿勢で参画していますが、原理原則論という事としてご理解ください。
今回の記事では、プロジェクトの「立ち上げ」「計画」プロセスを行う上で、お客様がPMとなって複数ベンダーをうまくとりまとめていくポイントについて述べていきます。
「立ち上げ」プロセスにおけるポイント
プロジェクトの「立ち上げ」プロセスでのポイントについて述べます。
PMBOKを参考にしつつ、これまでの経験をもとに重要なポイントを挙げています。
プロジェクトの「憲法」を作る
PMBOKでは「プロジェクト憲章」と表現されるものですが、プロジェクトの概要・目標・スコープを明確にします。
また、そのプロジェクトがビジネス上どのような効果をあげるものなのか、ビジネスユースケースも明確にします。
「プロジェクト憲章」という名前ではなくとも、お客様から発行されるRFPやそのインプットとなるシステム企画書などで表現される事もあります。
様々なベンダーが参画する上で、プロジェクトの「憲法」として、プロジェクトが完了するまで機能するものである事が重要です。
この「憲法」が明確であればあるほど、複数ベンダーが同じ方向を向いて一つの目標に対して走り出せます。
システムの全体像(グランドデザイン)を描く
ビジネス要件およびプロジェクト目標を達成する為に、システムの全体像(グランドデザイン)を描きます。
お客様やコンサルティング会社(場合によっては我々のようなSIer)が作成するRFPやシステム企画書の中で記載されるケースもありますが、システム全体を見渡して、サブシステムをどのように分割し、どのようなシステム要件が必要になるのかを明確にします。
そもそも、システムのグランドデザインがわからない状態では、サブシステムとして分割もできませんし複数ベンダーに委託する事も不可能です。
この時点でシステム境界を明確にしておくことで、各ベンダーからの見積精度があがり、リスクは低減する事ができます。
また、サブシステムの役割と位置づけを明確にする事で、以後の実行プロセスにおいて不測の事態があった場合にも、想定外ケースへの対応をどのサブシステムが担当すべきかという、原理原則論がしやすくなるため、ベンダー間調整にも役に立ちます。
「計画(体制整備)」プロセスにおけるポイント
プロジェクトの「計画」プロセスでのポイントについて述べます。
PMBOKの定義では「実行」プロセスのアクティビティも一部含まれますが、これまでの経験をもとに重要なポイントを挙げています。
プロジェクトの目的を十分に理解したベンダーを選定する
調達計画を立案し候補となるベンダーに提案依頼を行います。
ベンダー各社からの提案を集めて、実現方針・採用するアーキテクチャ・プロジェクトの進め方、見積費用などの情報を得ます。
それぞれ重要な要素ですが、最も大切な事はそのベンダーが「プロジェクトの目的を十分に理解しているか」というポイントです。
いかに優れたソリューションを有していたとしても、いかに見積費用が安くとも、それだけで選ばれることはありません。
開発規模が大きくなればなるほど、プロジェクト期間も長くなり困難な状況も発生する事もあり、一蓮托生のプロジェクトチームとして信頼に値するベンダーであるか、調達時に見極める必要があります。
※担当するサブシステムの重要性・優先度にもよりますが、上記は一つの例としてあげます。
プロジェクトを横断した「事務局」を設置する
連載第一回のマルチベンダー体制におけるデメリットでも記載した通り、複数ベンダーを取りまとめコントロールする事がプロジェクトを円滑に進める為の考慮ポイントといえます。
どのベンダーも高いプロ意識をもってプロジェクトに参画していますが、局所的には利害関係が一致しないケースもあり、その場合の調整を行うための裁定機関が必要となります。
「PMO」と呼ぶ事もありますが、「事務局」の機能は単純に打ち合わせ招集をしたり司会進行をするだけでなく、プロジェクトの全体方針を示しながら、全体のリスク管理や課題管理を行い、複数ベンダー間の調整を行う事が求められます。
重要な意思決定を行う機関であり、プロジェクトオーナーの判断を仰ぎながらコスト面・スケジュール面での調整も行う必要があります。
大規模開発でマルチベンダー体制をとる場合には、お客様側に「事務局」を設置する事がプロジェクトを成功に導く要素と言えます。
まとめ
第二回では、プロジェクト成功の最も重要な鍵となる、プロジェクトの立ち上げ・計画時のポイントについて述べさせて頂きました。
プロジェクトの「憲法」ができ、システムの「グランドデザイン」が描かれ、「信頼できるベンダー」を確保し、運営する「事務局」が発足しました。
これからプロジェクトが完了するまで、同じ目標に向かう体制が準備できたと言えます。
第三回では、引き続きプロジェクトの「計画」プロセスにおける、スケジュールや運営ルールの立案についてご紹介させて頂きます。