コラム
2021/08/31

CMS構築におけるプロジェクト管理について~コロナ禍におけるリモートワーク下で重視すべきこと~

  • CMS

はじめに

CMS構築におけるプロジェクト管理について~コロナ禍におけるリモートワーク下で重視すべきこと~ CMSとは「コンテンツ管理システム」の略称で、専門知識がない人でもWebサイトの構築や運営ができる仕組みのことです。
多くの製品が存在し、WEBSASではハイエンドCMSからオープンソースCMSまで、多岐に渡る取り扱いがあり、多くの導入実績があります。

CMS構築におけるプロジェクト管理のポイントについて、昨今の「コロナ禍におけるリモートワーク環境下」を踏まえたうえでのポイントを3点に絞って、ご紹介していきたいと思います。

「プロセス化」人に依存しない仕組み作り

売上1千万以下程度の規模のプロジェクトであれば、PMがプロジェクト全体を把握し、PMの力量でプロジェクトを回せるかもしれません。
スーパーPMであれば、もっと規模の大きなプロジェクトであっても、回せるかもしれません。
しかしながら、これは「PM」その人に依存した体制であり、組織としては脆弱です。

これを払しょくするのが、プロセス化です。

プロセス化とは、平たく言うとルールを作ること。

プロジェクト管理プロセスを体系的にまとめたものが「PMBOK」ですが、これを全部理解した上でプロジェクト管理にあたるというより、案件特性に合わせて必要な考え方をピックアップして取り入れるのが良いと私は思っています(全部理解するのは大変ですし)

「コロナ禍」がプロジェクト管理に与える最大のリスクは「コミュニケーション不足」だと思っています。
同じ空間にいてちょっと話しかけるとか、立ち話をする、顔色を見る、というのは、実はプロジェクト管理上はとても大事で、課題の兆候を発見したり、ミスを即時に是正したりに役立っています。
これができなくなってしまった「コロナ禍」では、ルールによりコミュニケーションの不足を補い、作業品質をキープしていくことが大事だと私は考えます。

CMS構築プロジェクトでプロセス化しておくポイントとして、以下と考えました。

要件定義プロセス

要件定義は、お客様に風呂敷を広げてもらって、それをお客様の合意のもと畳んでいくフェーズで、プロジェクトの先行きを決定する最も大事なフェーズです。
CMSを導入してやりたいこと(=業務要件)、また、CMSでどうやって実現していくか(=システム要件。機能要件・非機能要件・移行要件・運用要件などにも分けられる)は、CMSというキーワードによって、その進め方をある程度、共通化することができます。
基本的な進め方の流れを「CMS要件定義プロセス」としてあらかじめ決めておき、個々の案件、管理するコンテンツ要件などに合わせて、進め方をカスタマイズしていきます。
何事も、ゼロベースから考えるより、前例やサンプルを元に考えるほうが安全だし確実、効率的というわけです。

レビュー管理プロセス

レビューとは品質管理プロセスの一環で、成果物に対して「検証」することです。
食べログなどでレビューというと「評価」や「感想」ですが、プロジェクト管理上でのレビューとは、後々の不具合や課題にならないように「検証」すること。ウォーターフォール開発では次工程に入って良いかの妥当性の「検証」です。(食べログのレビューより「重い」イメージです)

レビュー管理プロセスとして決めることは以下の通り。

レビュー方法 対面や机上など、レビューをどうやってやるか。
レビュー担当 レビューア(レビューする人)とレビューイ(レビューされる人)は誰か。
レビュー観点 レビューアがチェックするポイント。
レビュー指標 レビュー結果の合格基準(指摘件数、レビューにかかった時間など)
レビュー管理方法 管理ツール(Excelで管理、レビュー用のサイトで管理、など)

テスト管理プロセス

テストも品質管理プロセスの一環です。

テスト管理プロセスとして決めることは以下の通り。

テスト方法 テスト環境、テスト技法など。
テスト管理方法 X管理図など。テストの予実を管理する方法。
不具合指標 定量的に不具合の傾向を図るための指標。起票率、不具合発生率、など。
不具合管理方法 不具合の起票ルール、管理ツールなど。
 

プロジェクト管理の基本は「QCD」

ちょっと当たり前の話になりますが、プロジェクト管理の基本は「QCD」品質・コスト・納期を守ることで、この3つを守ることができればプロジェクトは成功したと言えます。
当たり前のことですが、やはりこれが本質だと思います。
「コロナ禍」のような先が見えない状況だからこそ、当たり前のことをやることが大事です。

Q(品質)『検査より予防』

「この仕様は設計上は曖昧だけど、テストで不具合として出せばいいや」という考えがあります。これはプロジェクト管理側としては是正してほしい考え方です。
プロジェクト上の問題は、後になるほど対応のコストがかかると言われています。設計を見直すのであれば、設計者とレビュアの工数だけで済みますが、テストフェーズの不具合として設計バグが見つかると、多くの「手戻り」コストが発生します。お客様の手元に渡った後、またサービスインした後に発覚すると、より多くのコストがかかってきます。
「検査」での発見に頼るのではなく、なるべく「予防」をすることが大事です。

C(コスト)『残業はPMから指示してさせるもの』

「上長から追加の仕事を振られたので残業しないと終わらない。一方で上長に残業を削減せよと指示される」という「あるある」をよく聞きます。
PMからメンバーへの指示に関しても同じことを思う人が多いと思います。
まず「定時内に追加作業を行う工夫はできないか」を作業者本人と相談して検討することが第一です。その上で、QCDのどれを優先するかを考え、別の担当者をアサインするか、本人の稼働を上げて対応させるか、明日の作業に回すか、などの方針を決めます。
残業するかしないかの裁量権は、基本的にPMにあることを、PM自身も認識し、メンバーにも認識させることが大事です。

D(納期)『WBSは2ヵ月後まで詳細化』

プロジェクトメンバーにとって「自分の行うべきタスクが分からない、不明確」なことは、大きなストレスになると思っています。また、タスクが曖昧な故に、蓋を開けたら何もできていませんでした、という事態に陥ることは、プロジェクトにとって大きな損失です。
WBSは、少なくとも次フェーズの分は詳細タスクに落とし込んでおくこと。目安としては、2ヶ月先まで詳細化しておけば安心、というのが私の考えです。
作業計画をきっちり立てれば、あとはそれに沿っているか、課題が無いかをチェックしていく。
またプロジェクトは生き物なので、最初に立てたWBSを臨機応変に修正すること。プロジェクトの大日程・マイルストーンに影響しない範囲であれば、個々のタスクは臨機応変に入れ替え・修正していくべきだと考えます。

 

山本五十六に学ぶリーダシップ

最後にリーダシップについて話します。

理想の上司として良く言われるのが山本五十六です。日本海軍の連合艦隊司令長官ですね。
有名な格言に

『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。』


がありますが、これには続きがあって、

『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。』
『やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』

というように続きます。

 

プロジェクトの立ち上げ期は、メンバー同士の繋がりも薄く壁があることが多いので、PMが主体的にリードして進めていきますが、これは最初にも触れた、PMその人に依存した状態です。
プロジェクトが成熟していくにつれて、山本五十六の言う「任せる」「信頼する」、つまり「メンバーの主体性」を引き出すこと。メンバーがより積極的にプロジェクトに参加する、自分で決める、という方向にシフトチェンジ・誘導していくリーダーシップのスタイルが大事というのが私の考えです。
特にコロナ禍においては、メンバー個々が積極的にコミュニケーションを取る姿勢が大事であり、プロジェクト内の自分の役割に責任感を持てば、自ずと積極的な姿勢になると考えます。

まとめ

世の中には「対面ではないとできない仕事」が数多くある中、システム開発業務は、PM業務含めてリモートで行うことのできる仕事であり、それに従事している私は幸運だったと最近つくづく思います。
ですが、プロジェクト管理は仕事の90%がコミュニケーションである、とも言われており、コロナ禍にあった2020年は、従来のスタイルでのプロジェクト管理では限界があると感じることが多々ありました。
今後、Afterコロナにおいても、リモートワークで働くスタイルが主流になっていくと考えられます。今までPMの裁量で解決できていたことも難しくなってくると思います。
「プロセス化で人に依存しない仕組みを作る」「基本のQCDを守る」「メンバーの主体性を引き出すリーダーシップ」については、コロナ禍でなくても重視すべきポイントだと思っており、コロナ禍というピンチをチャンスに変えて、お客様と我々がWin-Winになっていけるようなプロジェクト運営をやっていきたいと思っています。

WEBSASくん