マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(4)
- 運用
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(1)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(2)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(3)
- マルチベンダー体制による大規模サイト開発プロジェクトを成功に導くポイント(4)
「近年、大規模なWebサイトの開発を行う際「マルチベンダー体制」でプロジェクトを進めるケースが増えてきています。
WEBSASが発足して10年ですが、その間のWebサイトに関わるテクノロジーの進化やニーズの多様化も背景となり、当社も単独でなく他社開発ベンダー様と協力して、お客様のプロジェクトを推進する事が多くなっています。
そのような中で、PMBOKで語られるプロジェクト管理ノウハウをベースとしつつ、これまでのWEBSASの大規模Webサイト開発の経験を活かして、マルチベンダー体制でのプロジェクトを成功に導くポイントについて、いくつかご紹介させて頂きます。
第三回では引き続き、プロジェクトの「計画」プロセスにおけるポイントについて述べさせていただきました。
第四回は、連載最終回としてプロジェクトの「実行」プロセスにおけるポイントについて述べさせていただきます。
「実行」プロセスにおけるポイント
プロジェクトの「実行」プロセスでのポイントについて述べます。
PMBOKの定義では「監視・コントロール」プロセスのアクティビティも含まれますが、これまでの経験をもとに重要なポイントを挙げています。
モニタリングを徹底する
「計画」に対して関係者の合意形成がなされ、ついにマルチベンダー体制でのプロジェクトのスタートが切って落とされました。
この時、「これから予想もしない障壁や困難が待ち構えているかもしれない・・・」、そんな不安が頭をもたげるかもしれません。しかし、悲観することは全くありません。
有識者の頭脳を結集してしっかり練りこまれた計画があるのですから、あとはプロジェクトの状況を真摯にモニタリングすれば、自ずとリスクは早晩明らかになり迅速な対策を打つことができます。
プロジェクトのゴールまではお客様もベンダーも、一連托生の運命共同体です。
たとえベンダー個別の問題事象であったとしてもリスクの芽は包み隠さず共有し、プロジェクトチームが一丸となってその芽を摘み取るべきです。
そういった分析を行うためにも、進捗や品質に対する定量的・定性的なモニタリングを徹底する事が重要であり、「事務局」は各ベンダーのモニタリングがきちんと機能している事を、担保する必要があります。
進捗と品質を見極める
前回までの計画プロセスにおいて、各ベンダーが開発するサブシステムが連携するポイントが、マイルストーンとして特に重要である事を述べました。
そのポイントにむけて、ベンダー各社はそれぞれ設計・実装・テストを進めていきますが、進捗や品質のモニタリングの手法や様式は、(根本はPMBOKであっても)ベンダーによって異なる場合もあります。
ただし、それらはベンダーがそれぞれ培ったノウハウであり換言すればベンダーの矜持とも言えます。
その為、「事務局」はベンダーから報告されるモニタリングの結果を尊重しつつ、ベンダーとの対話を通して、「事務局」自身で進捗と品質を見極めていく必要があります。
もし「事務局」として、ベンダーの報告内容に関して疑問や懸念がある場合には、問題お先送りせず早急に明らかにし、対策を行う必要があります。
言わずもがなですが、プロジェクトは進行すればするほど軌道修正が難しくなります。
局所的には、見て見ぬふりをしてやり過ごしたい、と思うシーンもあるかもしれませんが、いつのタイミングであっても、「今気づいてよかった」という前向きな姿勢で、問題を探す心構えが重要と言えます。
また、ベンダーがお客様を含めたプロジェクト全体に対して、課題やリスクといった「不都合な真実」を報告しやすいような雰囲気を醸成しておく事も「事務局」に求められます。
個人的な経験ですが、「事務局」にムードメーカーとなるメンバーがいた事で、何度も助けられたものです。
運命共同体として一丸となり是正する
仮に、とあるベンダー(A社)のサブシステムの開発に進捗遅延が発生し、システム連携テストに間に合わないリスクが顕在化したとしましょう。
遅延理由にもよりますが、このような場合、まずはA社に対する管理強化とA社内の自浄努力によるリカバリがなされます。
ただし、A社のリカバリだけに任せているのでは、「事務局」としては役割不十分であり、セカンドプランなどプロジェクト全体として調整可能な余地はないか、他社をも巻き込んで是正する姿勢が必要です。
確かに火事を発生させたのはA社の責任かもしれませんが、その消火をA社に任せて対岸の火事と思っているとあっという間にプロジェクト全体に延焼している、という最悪の事態になってしまうかもしれません。
ご存じの通り、火事は小さいうちが消火も早いですし、他社が順調な状況であれば支援体制もとりやすいものです。
ベンダー間の利害関係を超越した「事務局」が、全体俯瞰した視点で判断し、プロジェクト全体への協力を要請する事が重要です。
【連載まとめ】 マルチベンダー体制の成功のポイントは「共創」にあり
第四回では、プロジェクトの「実行」(および、「監視・コントロール」)プロセスを対象としました。
もちろん、PMBOKや当社の開発標準などの具体的なツール・手法・実績をご紹介する事もできたのですが、いずれの手段を採用するとしても、その根底にあるべき「心構え」を中心に述べさせて頂きました。
第一回で述べた通りマルチベンダー体制にはメリットもデメリットも存在します。
そのメリットを最大化しデメリットを最小化する為には、「事務局」を中心として、お客様とベンダーがリスペクトしあって、最終的なゴールを目指す姿勢を一時も忘れてはいけません。
プロジェクトという運命共同体において求められる姿は、「競争」ではなく「共創」であると言えるのではないでしょうか。
テクノロジーが多様化・高度化していく中で、今後もマルチベンダー体制でのサイト開発が増えてきます。
10年超の実績を積みあげる中で、WEBSASがこれまで培ったマルチベンダー体制における大規模サイト開発の経験を活かして、お客様のビジネスの成功をご支援させて頂きます。